テレワークは通信費、電気代がかさむ
大手人材紹介会社・パーソル傘下のシンクタンク、パーソル総合研究所が行った調査によれば、2020年11月時点での日本全国における正社員のテレワーク実施率は24.7%とのことでした。
一見、低い数字のように思えますが、従業員が1万人以上の企業では実施率は45.0%にも達しています。一方、100人未満の場合は13.1%に過ぎません。つまり、企業規模によっても足並みが異なる、というのが実情のようです。
そして、テレワークを行うことで、これまでには考えられなかった問題が浮上してきました。それは「自宅の通信費、電気代がかさむ」ということです。オフィスに出勤して仕事をしている場合は、オフィスに設置されているパソコンを使って仕事をするのが基本なので、通信費や電気代を従業員が自ら負担することはまずありえません。
しかし、テレワークになると、自宅に会社支給のパソコンを持ち帰り、自宅のインターネット回線を使って仕事するのが前提になります。つまり、通信費や電気代は自分で負担することになるため、家計にも少なからず影響が及ぶはずです。また、自宅に自分の部屋がないため、状況に応じてシェアオフィスに行き仕事をする羽目になる社員も一定数います。
このような実情を鑑み、在宅勤務手当などの名目で電気代、通信費の一部を支給する会社も出てきました。しかし、今までテレワークを採用している企業自体が少なかったためか、税務上の取扱いが整備されていなかったのも事実です。
在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)のポイントは?
国税庁は、テレワークにかかる費用の税務上の扱いをまとめ、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」として発表しました。
ここでは、主要なポイントにのみ絞って解説しましょう。
まず、在宅勤務手当の扱いについてですが「毎月1万円を在宅勤務手当として支給する」など、一定額を渡しきることが前提で運用されている場合は、従業員に対する給与として課税しなくてはいけません。
一方「通信費、電気代、シェアオフィスの利用代金など、テレワークで発生する費用について、業務に使った分を計算して精算する」など、実費相当額を生産することを前提に運用されている場合は、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
なお、会社によってはテレワーク環境整備のために、従業員に対しオフィスデスクやチェア、事務用品などを提供するケースもあります。この場合、会社を退職したり、テレワークをしなくなったりした場合に返還義務がある場合は「貸与」とみなされるため、従業員に対する給与として課税する必要はありません。しかし、返還義務がない場合は、従業員に対する現物給与として扱われるので、課税する必要が出てきます。