年収の壁ってよく聞くけれど
テレビ、Web記事、新聞のニュースで時折出てくる言葉の一つに「年収の壁」があります。これは、税金・社会保険の負担が生じる一定の年収額の境目を指すものです。つまり、年収がその金額を上回ると、本人に税金・社会保険料を払う義務が生じ、扶養者の所得税の控除が受けられなくなるラインを指します。このため、年収の壁に近い収入で働く人の場合は、あえて働く時間を調整して、手取りの減少や家族の税負担の増加を避けていることも珍しくありません。
パート・アルバイトの募集でたまに見かける「扶養控除内で働けます」といった文言は、想定稼働時間や時給等の条件を鑑み、所得税や社会保険料を払う必要がないよう調整されている求人と考えましょう。
なお、一口に「年収の壁」といっても、税金に関するものと、社会保険に関するものとに分類することが可能です。両者には歴然とした違いがあるため、年収がどうなると何が起きるのかを含めて知っておきましょう。
2種類の年収の壁の違いは?
税金の壁には「103万円」「150万円」「201万円」の3種類があります。つまり、働く本人の年収(給与収入)が103万円に達したら、本人は所得税を払わなくてはいけません。一方、配偶者・親などの扶養者には、配偶者特別控除が適用されるとともに、特定扶養控除の適用がなくなります。150万円に達すると、配偶者特別控除による控除額が段階的に減額され、201万円に達すればゼロになる仕組みです。
一方、社会保険の壁には「106万円の壁」「130万円の壁」があります。まず、106万円の壁は勤め先の従業員数が51名以上である、労働時間が週20時間以上であるなど、所定の条件を満たした場合に発生する壁です。この場合、配偶者の社会保険の扶養から外れるため、勤め先の厚生年金や健康保険に加入しなくてはいけません。また、保険料を払う必要があることから、手取り収入は減ってしまいます。一方、学生など親の扶養内で働く場合は、親が加入する社会保険に被扶養者として加入し続けることが可能です。
しかし、年収が130万円になると、国民年金や国民健康保険の加入義務が発生します。この場合、配偶者や親の社会保険の扶養からは完全に外れるため、たとえ学生であっても国民健康保険料を払わなくてはいけません。
税金や社会保険料の支払いは、短期的に見ると手取りが減るというデメリットがあります。しかし、長期的に見れば、公的サービスを維持していくために必要な経費です。手取りが減ることを回避するためだけに長時間働きたくないという従業員がいた場合は、社会保険労務士とも相談し、メリットを説明してみましょう。