パブリックコメントは締切済み
2022年8月に、Webメディアを駆け巡った「副業収入300万円以下は雑所得に」というニュースがありました。2022年8月1日に国税庁が発表した所得税基本通達の一部改正案に関する報道です。
簡単にまとめると、会社員が本業の傍ら副業を営んだ場合、年間収入が300万円以下だったときは事業所得ではなく雑所得として扱う方向での改正が検討されています。この件に関し、国税庁は8月31日までパブリックコメントを募集していました。結果はまだ公表されていないため、動向を注視したほうが良いでしょう。
そもそも、副業で得られた所得が事業所得にあたるかの判定基準は、これまでは非常にあいまいだったのも事実です。「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務をいうもの」であれば事業所得とされてきました。
しかし、所得税基本通達の一部改正案は「1年で300万円」という明確なボーダーラインを示しています。1年で300万円ということは、1カ月で25万円の収入が少なくとも必要になるという意味です。
大手求人広告代理店の株式会社マイナビが行った調査によれば、副業で実際に得ている収入の平均は5万9,782円とのことでした。
出典:株式会社マイナビ「副業の平均月収は「5万9,782円」。希望と実態のギャップは「7万2,764円」で半分に届かず」
仮に案の通りに改正がなされた場合、会社員が営む副業のほとんどが雑所得として扱われる可能性が出てくるでしょう。
事前にしかるべき機関・専門家への相談を
2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表し、国としても会社員の副業を認める方向に舵を切りました。そのため、副業をすでに解禁していたり、解禁する方向で検討していたりする会社も珍しくありません。仮に、自社の従業員から副業を行いたいと申し出があった場合は、本業に支障をきたさない程度であれば容認しても良いでしょう。
しかし、その際は気を付けるべき点がいくつかあります。まず、本業・副業の区別をつけ、健康を害さないよう時間管理をした上で取り組むように伝えましょう。加えて、同業他社での副業を禁止するなど、情報漏洩が生じるリスクの軽減策を講じるのも重要です。
そして、仮に今回の改正案が確定した場合は、副業による収入が雑所得に当たる可能性も認識しておくべき点を伝えてください。雑所得に当たる場合、事業所得の場合とは違い給与所得との損益通算はできません。その上、本来は雑所得であるにも関わらず、事業所得として申告した場合、税務調査で修正申告を求められる可能性が出てきます。事前に税務署や税理士など、しかるべき機関・専門家に相談するよう伝えましょう。