退任しないのは事業承継税制のせい!?
今年の9月、メディアを騒がせたニュースの1つにとある大手芸能事務所をめぐるスキャンダルがありました。これに伴い会見を行った芸能事務所の社長(創業者のめい)が引責辞任するかが注目されましたが、会見の時点では引退しないことになっています。その理由は公にはされていませんが、一つの理由として推測されたのが、事業承継税制です。
事業承継税制とは、後継者が先代から事業を承継し、将来的にその次の後継者に円滑に事業承継をさせられれば、納税を猶予されていた相続税および贈与税が免除される制度を指します。この制度を利用するためには、満たすべき要件がたくさんあるので注意しなくてはいけません。
まず、会社が資本金もしくは従業員数のいずれかの条件において中小企業者であると判定されれば利用できます。また、後継者は相続が発生してからから5ヵ月以内に代表取締役に就任しないといけないなど、先代経営者や後継者に関する条件も細かく定められています。
事業承継税制における5年ルールとは
既に触れた通り、事業承継税制はスタートの時点で細かい条件を満たしていないと利用すらできません。また、利用を開始してからも、最低5年間は以下のルールを守らないと、相続税・贈与税の猶予が打ち切られます。そのルールのうち、主要なものを列挙します。
- 後継者が会社の代表を辞任しないこと
- 後継者が会社の株式を保有し続けること
- 会社の雇用の8割を維持すること
なお「会社の雇用の8割を維持」という条件は、経営条件の悪化や正当な理由がある場合は満たせなくても構いません。極論、5年経過後は会社の代表を辞任しても、株式を売却しても構いませんが、次の代に事業承継が行えなかった場合は、相続税・贈与税の免除は受けられなくなります。
事業承継の方法によっても扱いが異なるので注意が必要です。まず、生前贈与で事業承継を行った場合は、再び事業承継税制を使って贈与すれば、相続税・贈与税が免除されます。また、相続が発生した場合は猶予されていた相続税・贈与税が免除されますが、次の代の後継者も事業承継税制を使いたい場合は、改めて申請しなくてはいけません。一方、贈与や相続ではなく、M&A(役員や第三者への株式の売却)で事業承継を行った場合は、相続税・贈与税の納税猶予は打ち切られます。
他にも、事業承継税制を利用する際は細かい条件を満たす必要があるため、利用を検討する場合は相続税・贈与税に精通した税理士に相談していただくのをおすすめします。
※参考にしたウェブサイト※
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/houjin.htm
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-133_01.pdf